帰るような旅立ち
戻る
じっと見上げる
セピア色の若くて綺麗なおばあちゃんの写真のように
なつかしく
あたたかいおひさまが
待っている
私は何かを愛している
何を愛しているのか探しに行こうとは思わない
この体内に流れる
やわらかい
やさしい体温を ただ ただ
あたたかく思う
私は始める
何を始めるのか焦ろうとは思わない
焦らないでも
この体温は真っ赤に体内を脈動している
それが新しい行き先
私は微笑む
細い手に握られた名もない野花
細い茎、透き通る花びら
おしべとめしべ
主張も疑問もないまま
ただ そっと そこにあり
私を見上げる強い瞳
あぁ、そこにおわす、あたたかいおひさま
私はもう うそをつきません
私のこのあたたかく流れる体温と、
絶対の忠誠を誓う清い野花のために
私は振り返る
ベッドに横たわる私の死体
大人びたドレスは大きすぎ、
細い靴は小さすぎ、
カサカサの肌に厚くのせられた白い粉
蝋人形の様に冷たく整ってる
でもこの屍はまだ埋葬されない
刑罰ではなく、
骨と皮だけの疲れた指先を握り締めてあげたいからだ
行ってきます
私はあなたに見えなかったものを見てきます