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作品たち

Dynamo Coléoptera

バンドを紹介する小話


その炭鉱跡地の砂山では、ありとあらゆる生き物たちが集まって、
これからのエネルギー源のあり方について話し合っていました。


小さなこがね虫も、ぶりゅーんと重たい音をたてながらやってきて不器用に着地すると、猫のまぬけな舌のようにはみ出た羽根をずりずりしまいこみながら、みんなの輪に加わりました。遅れて来たのにうるさいわねぇ、というふうに2、3人の人が彼を見ていました。


「地底にものすごい深い穴を掘って、マグマの力を使うのはどうでしょう。」と、アリの外務官は言いました。
白くまがソーラーパネルでそこらじゅうを覆ってしまえばいいと提案しました。
タラモンジョ星人は、ブー星のR338Sをもっとみんなに開放するべきだと主張しました。するとブー星人はブーブー言い出しました。
そう言うタラモンジョ星人は農薬を違法に使っていると妖怪はみだぁが訴えました。すると、タラモンジョ星人と関係の深いタライザルが突然会議の中心部に向かって小石を投げてきました。
もうやめろよ、と言って何人かが肩を落とすとタライザルはもう躍起になって前より一層激しく投げるので、とうとうみんなぱらぱらと帰って行ってしまいました。その間もずっと花川工務店の専務は携帯でぜんぜん関係ない事をしゃべっていました。

暇のある人だけがただなんとなく残って、何人かはジャグリングの練習を始め、どこが会議の中心部なのか分からないぐらいに適当にそこらじゅうで固まって、だべったり、寝転んだりしていました。春の陽気で空にはうっすらとぼやけた雲が広がっていました。
「あぁ、のどかだねぇ。いやぁ、これで十分なのに、みんな躍起になっちゃって、それがいけないんじゃないのかねえ。」と、禅マスターが豊かな笑みを浮かべて言いました。こがね虫は話すのか、やめたのか、気持ち悪い間を置いてから、変に力んで「い、いや、そんな事言ってる場合じゃない。僕は、みんなが自分でもっと発電すればいいと思うんです。」と答えました。言ったはいいが、うまく説明もできず、相手が大して聞いていなかったのを見ると、恥ずかしくなり、ゆっくり立ち上がり、ぶりゅりゅーんとモーターのようなでっかい音をたてて、かっこ悪く飛んで行ってしまいました。そのすごい風で顔の辺をひらひらぁっとしている服の布を払いのけながら、禅マスターは「あぁ、またガサツなエナジーが飛んできた、やだやだ。」と言い、フケでも落とすかのように肩をぱっぱっと払って自分を清めました。

言ったはいいが、じゃあどうやってぇ、と問いながら、こがね虫は焼ける思いで上昇しつづけました。
重たいカラダをぶーんと持ち上げると、カラダのあらゆる部分が震えだしました。
「ふにゃあぁ」と意味のない言葉を絶叫するやいなや、こがね虫はすごい速さで回転し、口を引きつるぐらい大きく開けてよだれを撒き散らしながら、腕を分けの分からん方角に引きつらせたりして、まったく意味のない動きをはちきれんばかりに始めたのでした。
拍手う。
そう、それこそが、
Dynamo Coléoptera !