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しゃれこうべ
紅い絹の裏地
雨にマッチの煙り
影に寄り添うた
吐く息が雨雲に滲む熱気のなか、
私は額に刃物をあてた。
じりりと深く
顔を削ぎ落とし、髪を結う
雲にあいた窓
水玉をはじく、青の光沢
”雨はあがるのや”
むきたての私
絹のゆで玉子
一人うつむいた
”コーヒーなんて街の汚れで入れた
琥珀色の水のよう。苦くて、
ちょっと酸っぱくて、
砂糖を入れて味付けをする。”
一人きりの
コップの底に映る
しゃれこうべ
がらんどうの瞳
窪みになだれ込む
ああ、夕暮れの街
”あすは晴れるのや”
来る日 来る来る日
陽に色あせた午後のカーテン、
淡いほこりの影に
あったかい、懐かしい思いが
黒く彷徨う。
変わらないのなら
私は行くわ
静かに狂った青い空の下
死に神一人、街を闊歩する
良い子に育った大人は見えないふりをし
ばかなガキども、遠くで叫ぶ。
日傘につたう、さわやかな風
まちがいさがしの道しるべ
街を彷徨う しゃれこうべ