森の小さな湖
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岩の下っ腹にはね返って湖面が言った。
「ぽちん。」
沈黙が破けたついでに岩肌も続けて言った。
「あぁ、今日は結構焼けてるよ、じりじりして気持ちいいわ」
湖面、「うん」
みんなじーっとした。
ありんこ、「やべっ」
岩肌からありんこが一匹、落っこちゃた。
湖面は水のわっかを、うわぁりつくって驚いた。
ありんこがいたことも気付かなかった岩肌もうわぁりとなった湖面を見つめた。
湖面にくっついて、浮かんだまま、ありんこはチクチク動きどうした。
風が、「どっちに行きたいんだ」と笑いながらあっちにこっちに湖面をすんすん吹いた。
そんな事も気付かずに、ありんこは一人で勝手にもがき続けた。
湖面の奥、いつもの驚いたようなまん丸目玉がくるりんくるりんと、両ひれをふるりんふるりん動かしながら、湖面を見てた。何にも考えてないよと言わんばかりに、何するでもなくすうんとあがってくると、あぁ毎日かったるい、というふうにそこらへんツンツン泳いで、あ、じゃ、通ったついでに、というふうに、ありんこ一匹大口あけてたべちゃった。
いつもの事ながら、湖面はやっぱり水のわっかをうわぁりつくって驚いた。
岩肌はまたまぶしい目を細めて空を見上げた。
もう風は違う場所にいた。